【夏の甲子園2025】横浜の新星・織田翔希が綾羽戦で見せた圧巻の一球とその成長の軌跡
2025年夏の甲子園で、横浜高校の2年生右腕・織田翔希が綾羽戦で見せた衝撃の一球とその成長の軌跡を紹介。

織田翔希の衝撃の一球
2025年8月14日、甲子園球場で行われた横浜(神奈川)対綾羽(滋賀)の2回戦。横浜が0対1とビハインドで迎えた4回裏、マウンドに上がったのは背番号10をつけた2年生右腕・織田翔希だった。
織田の初球は、右打者の外角低めに突き刺さるストレート。捕手を務める駒橋優樹(3年)のミットがピクリとも動かず、見る者に爽快感を与える。その重力に逆らうような美しい軌道と、ボールからほとばしる圧力もインパクト十分。たった1球に、この2年生右腕の末恐ろしい潜在能力と魅力が凝縮されていた。
電光掲示板には、「152キロ」という球速が表示された。甲子園球場のスタンドは「おぉ〜」とどよめいた。だが、スピードガンの数値など、織田のストレートの中身の濃さに比べれば、無機質な数字でしかなかった。
織田の成長の軌跡
織田は村田浩明監督から「ピンチでいつでもいけるように」と言われ、準備していたという。「チームに流れを持っていきたい」という思いを初球のストレートにダイレクトに込めた。
「本当に、あのボールはかかりがよかったです」
織田はそう振り返る。普段から「球速は意識しない」と語っているように、球速より球質を重視する投手だ。それだけに、この1球にはよほどの手応えがあったのだろう。
前回登板だった8日の敦賀気比(福井)戦では、甲子園での初完封勝利を挙げていた。しかし、ストレートに関しては、凄みを感じるような球は少なかった。結果的に無失点に抑えたとはいえ、被安打は7を数えた。奪三振数も3個に留まっている。
織田自身、この日の投球内容について、「指のかかりが悪かった」「自分の思い描いた軌道で投げられなかった」と振り返っている。ただし、見方を変えれば、指のかかりが悪い状態で実力校を完封してしまうところに、織田の恐ろしさがある。
しかも、この試合は降雨のため、4回の時点で1時間7分の中断を挟んでいる。マウンドがぬかるむ悪条件のなか、緊張感を保ちづらい中断時間を経ても9イニングを投げ切った。投手としてのたくましさを感じさせた、価値のある勝利だった。
柔軟性を見せた敦賀気比戦から一転、綾羽戦の織田は「凄み」を見せつけた。