ラグビーのワールドカップ開催に向けて
ワールドラグビー新会長が来日し、日本の 2035 年 W 杯開催について歓迎する意向を示した。しかし、日本開催には欧州勢の反対も予想される。

ワールドラグビー新会長が来日 日本の 2035 年 W 杯開催にどんな作用が働くか
国際統括団体ワールドラグビー(WR)のブレット・ロビンソン新会長(55)がこのほど来日し、メディアを対象にしたブリーフィングも開かれた。その中で、日本が再招致を目指している 2035 年の W 杯について「19 年大会を大成功に終わらせた日本に対して、世界中の人々が信頼を置いている。日本には素晴らしい大会を開ける能力がある」と、歓迎する意向を示した。
新会長のプロフィルを紹介しておこう。1970 年 1 月にオーストラリア・クインズランド州のトゥーウンバで生まれ、FL としてオーストラリア代表キャップ 16 を持つ。スーパーラグビーのブランビーズでは主将も経験。英国のオックスフォード大に留学して、こちらも 2001 年に主将を務めた“ブルー”(ケンブリッジ大との対校戦出場者に与えられる称号)だ。
昨年 11 月に行われた、ビル・ボーモント会長の任期満了に伴う会長選に立候補。決選投票の末、他の 2 人の候補者を破り、南半球出身で初めて WR 会長の座についた。この選挙で勝敗を決めたのが、日本協会が持っていた 3 票だったといわれている。日本協会は、誰に投票したか明らかにしていないが、元フランス代表 NO・8 アブデラティフ・ベナジ氏との決選投票の票差はわずかに 2。ロビンソン会長が就任後、初の外遊先に選んだのがこの日本で、会長自身もブリーフィングの冒頭で「日本の支援があったのだから、それは当然のこと」と語った。日本はもともと、ロビンソン氏が会長にふさわしいと考えていたこともあり、3 票はロビンソン氏に入れられたとみるのが妥当だ。
さて、ここからが本題。日本は最短、35 年の W 杯招致を目指している。今回の会長選ではロビンソン氏をはじめ、おそらく各候補が招致支援をする見返りとして投票での支持を依頼したとみられる。政治の力学としては当然のことで、日本の招致活動への追い風となったて思っていいだろう。
ブリーフィングに同席した WR のアラン・ギルピン最高経営責任者(CEO)は 35、39 年 W 杯については、「どこを会場とするかは WR の長期的な戦略に基づいて決める」と、2020 年までとられていた招致希望国政府による〝入札〟を廃止したことを改めて強調。その上で「日本協会は非常に強い戦略と、大きな意欲を持っている」と評価し、35 年の開催国は「27 年 W 杯オーストラリア大会前に決定される」と明かした。
それでは 35 年の日本開催が決定的かというと、微妙なところもある。27 年オーストラリアの次の 31 年大会は米国・カナダなど北米で実施される。これまで 10 回催されてきた中で、欧州以外が 2 大会続いたことは初めて。35 年を日本に持ってくることに、ラグビー界のエスタブリッシュメントである欧州がいい顔をするとは思えない。35 年大会には英国・アイルランドやイタリア、スペインの欧州勢が立候補表明や関心を示しており、日本開催が 39 年に回されるという観測もある。
2 年後には帰趨が決まる。それまでわれわれは、W 杯開催国にふさわしいファン、メディア、そしてプレーヤーに成長していようではないか。