江川卓さんの野球殿堂入りを巡る考察

江川卓さんの野球殿堂入りの可能性について、現状ではほとんどないと結論づけた。しかし、その活躍と伝説は今も語り継がれている。

江川卓さんの野球殿堂入りを巡る考察

野球殿堂博物館は 1 月に今年の殿堂入り顕彰者を発表し、エキスパート部門(監督、コーチを退き 6 カ月以上か現役引退後 21 年以上の元プロ)では、阪神で 3 度の本塁打王に輝いた「4 代目ミスタータイガース」掛布雅之さん(69)が選出された。掛布さんと言えば、1970 年代半ばから 80 年代半ばまで日本球界をけん引した名打者だ。思い出されるのが、最大のライバルだった巨人・江川卓投手との名勝負。掛布さんが殿堂入りを果たした今、江川さんの殿堂入りの可能性について、ちょっと視点を変えて考えてみた。(一部敬称略)

十分でないプロ通算成績

まず、結論から先に言ってしまうと、江川さんの野球殿堂入りの可能性は、現状ではほとんどない。プロの通算は 2024 年終了時点で歴代 63 位の 135 勝(72 敗)。20 勝(6 敗)を挙げて投手 5 冠に輝いた 81 年を含め、5 年連続計 6 度の 15 勝以上など、一時期は球界全体のエース という活躍を演じた一方、13 勝を挙げた 87 年を限りに「右肩が限界」としてあっさり引退し、プロ生活 9 年でピリオドを打った。10 年以上のメジャー経験を条件とする米国の野球殿堂なら、この時点で候補に入ることもできない。

135 勝は、殿堂入りしていない巨人 OB(主に巨人でプレーした投手)に限っても、桑田真澄(173 勝)、高橋一三(167 勝)、西本聖(165 勝)、槙原寛己(159 勝)、城之内邦雄(141 勝)、菅野智之(136 勝)らより下になる。27 完封も、城之内(36)、槙原(35)、1366 奪三振も槙原(2111)、高橋一(1977)、桑田(1992=日米通算)らに大きく及ばない。言うまでもなく、他球団 OB の好投手も大勢いる。いくら伝説の豪球投手として名をはせたと言っても、江川さんが殿堂入りすれば、アンバランスで不公平感が否めなくなる。そもそも、指導者などとしてもう一度現場に復帰しない限り、候補者リストに再掲載される可能性はない。

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