佐々木朗希の故障者リスト入りと日米メディアの報道文化の違い
佐々木朗希が故障者リスト入りした背景と、日米メディアの報道文化の違いを分析。ドジャースの管理体制や選手のセルフマネジメントに焦点を当てる。

佐々木朗希の故障者リスト入り
2025年5月9日(日本時間10日)のダイヤモンドバックス戦での先発を最後に、ロサンゼルス・ドジャースの佐々木朗希が「右肩インピンジメント症候群」のため15日間の故障者リスト(IL)入りした。期待の大型ルーキーの戦線離脱は、アメリカメディアでどのように受け止められているのだろうか?
アメリカメディアの反応
元マイアミ・マーリンズ球団社長のデビッド・サムソン氏は、「MRIの結果、右肩のインピンジメントだと判明した。ササキはそれまで何も言わず、数週間抱えていたと主張している。最も腹立たしいのは、選手が自分の体について正直に伝えないことだ。我々が状態を推測しなければならなくなる」と厳しい言葉で評した。
MLB公式やESPNは、佐々木の平均球速が日本時代より明らかに低下していた点に注目し、「パフォーマンス全体が落ちていたことと関係があるだろう」と冷静に分析。そのうえで「今回の離脱は再調整のチャンス」と佐々木自身のコメントで記事を締めるなど、育成の視点から報じている。
ドジャースの管理体制への批判
『ロサンゼルス・タイムズ』のディラン・ヘルナンデス記者は、ドジャースの故障管理体制そのものを強く批判した。「ドジャースは何度も警告サインを無視し、自業自得の泥沼に足を踏み入れてきた」とし、ロバーツ監督にも「またツケを払わされる」と痛烈なコメントを投げかけている。
日米メディアの報道文化の違い
注目すべきは、これらの批判は佐々木個人に向けられているのではなく、あくまで球団の起用判断や負荷管理システム、選手と監督コミュニケーションの甘さを問題視している点だ。個人ではなく、組織に責任を問う姿勢。それはアメリカの報道文化を象徴するものかもしれない。
対して日本の報道は、すべての報道が否定的というわけではないがやや個人への厳しさが先行した。佐々木はかねてから「類稀な才能と引き換えの繊細さ」を指摘されてきた。ロッテ時代の5年で登板回数が20試合を超えたシーズンは2022年の一度だけで、通算投球イニングも394回2/3にとどまる。
佐々木の今後の展望
昨年も右上肢のコンディション不良などで離脱し、投球回数は111イニング止まり。自身初の2けた勝利を挙げたものの、「日本で圧倒的な成績を残した」とまでは言い切れない。そんな背景もあり、紙面やネット上では「メジャーで通用せず“期待外れ”」「球威が落ち、制球もバラバラ」といったような見出しが並び、否定的な記事も目立った。
佐々木は、IL入りする前の最後の登板となったアリゾナ・ダイヤモンドバックス戦で平均94.8マイル(約152.6キロ)の速球を投げたが、これは過去のシーズン平均を1マイル以上下回っていた。結果的にこの試合では4イニングで5安打5失点、メジャーキャリアで初めて三振をひとつも奪えなかった。
最速160キロ超のフォーシームと鋭いスプリットを武器に、佐々木は昨オフのポスティング市場で脚光を浴びた。『ロサンゼルス・タイムズ』(1月23日付)によれば、10代の頃にトミー・ジョン手術を勧められるほどの肘の不安を抱えており、「2年後の健康は保証できない」と考え、契約制限のある23歳の時点にもかかわらず、ポスティングを決断。「万全のうちに、世界最高峰で投げたい」という強い覚悟があったという。
最終的にドジャースが争奪戦を制し、彼は即ローテーション入り。大谷翔平、山本由伸と並ぶ存在として、球団内外から即戦力としての期待が寄せられていた。