【厩舎のカタチ】開業から1年…調教師・福永祐一の現在地 その先に見据える確かな理想像
調教師・福永祐一が開業から1年を迎え、現在の心境と今後の展望を語る。

福永祐一調教師は、開業から1年が経過した。瀟洒なレンガ風の外壁をまとったトレセンの一角にある厩舎には、蹄の跡とチップ、職人たちが残したわずかな砂さえ目についてしまうほど整然とした空間が広がる。馬に心地良いという暖色照明は落ち、思い思いに馬房で安寧の時を過ごす調教終わりのアスリートたちを横目に、引き戸を開けて大仲へ。向かい合った先に調教師・福永祐一がどっしりと腰を下ろす。師の右側には目新しい大中小の壁掛けモニター、その下、封の解かれていないハンドモップにはまだ出番が訪れていないようだ。
「これから調教師としての本当の難しさや苦労に直面していくのかなとは思いますが、厩舎を移転して自分の望むような設備が整い、したい管理ができる形になりました」と福永調教師は語る。
2023 年 3 月 4 日の阪神競馬場で、全盛期にして「最高の騎手人生」に別れを告げたトップジョッキーは、技術調教師を経て 2024 年に開業。今年場所を新たに、愛馬を勝負の場へ送り出す時を過ごしている。
「1年たってイメージしていたことと違ったというのはそこまで多くなかったです。なぜかというとずっと具体的にイメージしていたから。ジョッキーのころから関わる馬のことを長いスパンで考えていたし、自分はそういう関わり、他のジョッキーと違う経験を積めていたことが大きかった」と福永調教師は振り返る。
膨らませ続けたビジョンは、はじけることなく現在に結びつく。水、木曜日の追い切りに騎乗し競馬場での週末に備えるルーティンからトレセン通いの日々。数キロ増えたという体重は一目ではわからず、馬上で入念な運動をこなしコースでは人馬一体風を切る姿が日常になった。
「日々の普通キャンターをどう質の高い動きにしていくかの方が、追い切りをどううまくやるかというより、自分の性に合っているというか、楽しさを感じている部分です」と福永調教師は語る。